「一人称単数」感想
7/18に村上春樹さんの短編小説の新作『一人称単数』が発売されました。僕は発売日に近くの本屋で探してすぐ買いました。読んだのはその次の日の7/19。
読んでから1週間ほど経っているのですが、読み返しながら感想を述べていこうと思います。
もし読みたいと気になってる方はぜひご参考にしてください。
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1.内容の構成
今回は短編小説です。目次は以下の通り。
①石のまくらに
②クリーム
③チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
④With the Beatles
⑤「ヤクルトスワローズ詩集」
⑥謝肉祭(Carnaval)
⑦品川猿の告白
⑧一人称単数
今回の作品は、村上春樹さんの「体験」や「自分の年齢の視点」から引き出される物語が多い印象です。
村上春樹さんが出逢った不思議な女の子の話がこの中にも何作品か含まれています。村上春樹さんが描く女性はとても不思議で奇妙とも言えるような魅力がありますが、今回もそれをありありと感じ取りました。
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2.印象に残った点
印象を受けたものは2つあります。
1つ目は、今までの作品にはなかった"短歌"が書かれていたことです。
『猫を棄てる-父親について語るとき-』で自身の父親のことを語った時に、お父さんが書いた俳句は紹介されていましたが、村上春樹さん自身が考えた短歌が作品に登場するのは初めてのことでしょう。(もし違う作品にあれば教えて下さると嬉しいです)
『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』という村上春樹のインタビュー集で、こんなことを言われています
他の人には書けない、その人でなくては書けない「実のある何か」がそこにくっきりと浮かび上がってきて、今まで見たことのないような情景がそこに見えて、不思議な声が聞こえて、懐かしい匂いがして、はっきりとする手触りがあって、そこで初めて「うん、こいつは素晴らしい短編小説だ」ということになります。
まさに今回の作品では、この言葉とまったく同じ感想を持ちました。
また、短編小説は、長編小説へ向けての実験台であったり、新しいことに挑戦する場だと仰っているので、この作品がどのように次の長編小説に活かされるのか凄く楽しみでもあります。
2つ目に印象に残ったのは、ご自身の年齢を凄く気にしていた点です。
村上春樹さんは、小説は体力がな必要だと常々仰っていて、毎日ランニングや水泳をしたり、マラソンやトライアスロンをしたりと健康に特に気をつけている印象で、「年齢」というものをこれまでの著作からは感じないほど元気さが伝わってきていましたが、今回の1つの作品の中で
「周りの女性が孫を2.3人持っていても不思議ではない年齢になったことを驚いている」
とご自身の年齢を気にする素振りが見えました。村上春樹さんは現在71歳(全く見えませんが)であり、あとどれほど彼の作品を読めるのか気になります。
まぁ同じ時代に生きて存在しているだけで、とっても嬉しいのですが……。
いかがだったでしょうか?僕は、村上春樹さんのインタビュー本で語られる言葉が大好きなのですが、今回は、村上春樹さん自身の物語として作り上げられ、自分の手で物語を作り上げて短編小説にしたということで凄く自分に「何か」が残る感触がありましたし、またすぐ読み返したいという気持ちにもなりました。
ぜひ皆さんも読んでみて下さい。
コメント欄で感想でも語り合いましょう。